感涙保証、私の愛聴盤 その３４
But Not For Me/Carol Sloane
このページから第２期愛聴盤の紹介に入る。”その３３”までに紹介したものは３枚ほど例外はあるが1972年から約５年の間に買った１８０枚余のレコードのうちから選んだものである。当時はまだ中古レコードという存在も知らず、ただひたすら普通のレコード屋さんで新品のレコードを定価で買っていたヒヨコであった。
子供が生まれてレコード収集を一時やめて、あることをきっかけにまた泥沼にはまっていったことは前に書いたとおりであるが、再開したのは1980年代も末になってからだ。再開したきっかけがある唄との出会いだったことから、それまで買ったことがなかったVocalものをさかんに集めるようになった。
このレコードもそんなときに買った一枚である。George Gershwin の曲ばかり歌ったアルバムのなかの１曲に私がお目当てとする How Long Has This Been Going On? という曲が含まれていた。Carol Sloane という歌手は５０年代後半から活躍していた人だから、もうこの時期になるととうにおばさん声となっていたけれど、歌詞の解釈は人生経験と共に極められて、歌全体に艶が出てくるようになる年代に入っていた。
Gershwin 兄弟のことはあまり詳しく書く必要はないだろう。兄の Ira が作詞を、弟の George が作曲を担当した。ポギーとベスという歌劇曲をはじめ非常にたくさんの曲を生んだコンビである。Sloane はこの Gershwin の曲を彼女独特の歌いまわしで表現している。なかでもあの名曲 Summertime のエンディングはなんというユニークさであろう。一度聴いたら頭の中でそこだけエンドレスになっているような錯覚に陥るのだ。何か考える仕事を残しているときに聴いてしまうと、この曲のエンディングがしきりにインタラプトをかけて仕事にならないので、これだけは聴く前にあなたに注意しておこう。
