感涙保証、私の愛聴盤 その３３
Saxophon Colossus/Sonny Rollins
ソニー･ロリンズという名を知ったのはジャズを聞き始めたすぐの頃だから、1972年だったと思う。当時のロリンズは延々と続くアドリブソロが秀逸で、野太い音とともに、飽きることのないフレーズが涌き出るようで、それはそれで上手いなあ、と思ったものである。ただ、バックを務めるメンバーは気の毒なくらい出番が来ることが少なかった。
しかし、このアルバムを聞いてから少しロリンズに対する思いが変わった。このアルバムが吹きこまれた1950年代の後半、彼の音楽はまだ唯我独尊のスタイルではなかったのだ。どちらかというと、リズムセクションの音もしっかり大事にしたバランスのとれた演奏が多い。私はこういう演奏のほうが落ちついて聴けると思った。私が好きな Tommy Flanagan のピアノも生かされている。何度か聴くうちにしっかり私の愛聴盤となった。
このアルバムが世に言う名盤と知ったのは後からである。名盤と言われていても私の好みに合わない物も数多いが、このアルバムの演奏はたしかに名演と推すにふさわしいと私も思っている。それにジャケットのセンスの良さには脱帽だ。色がいい。シルエットとなった形の治まり具合がとてもいい。このジャケットデザインが気に入った私は、当時描いた漫画の一こまにこのジャケットを採用したことを覚えている。ガロという雑誌に何度か投稿してはボツにされてくさっていた漫画青年時代の私を懐かしく思い出す一枚のアルバムでもある。
