感涙保証、私の愛聴盤 その２
June Christy 1946
私のレコード遍歴は初給料でオーディオ装置を手に入れた直後のことなので、それは２１になった頃から始まると思う。しばらくは呑み代に給料のほとんどが消えていく毎日だったが、残ったお金で月に数枚のレコードを購入していた。まだ中古レコードの存在も知らず、佐賀の高柳楽器店のお得意様になっていた。
人並みに失恋もし、新たな出会いも経験して身を固めたのが２６であったか。その５年の間に１８０枚程度のジャズレコードが集まっていた。今にして思えば、いたって健全な枚数である。それから子育ての期間が切れ目無く続いた。いつの間にか住所は熊本に移っていた。小さな子供にとって、レコードジャケットは近寄りがたい存在ではなく、むしろ絵本と同様の遊び道具であり、とても日常的に聞く位置に収めておくものではなくなった。当然、ターンテーブルも回らなくなった。
時は流れ、１０年ほどの月日が経つ。やっと子供に手がかからなくなった頃、私に時間的な余裕が生まれた。ある休日の午後、久しぶりに映画を見た。その映画のタイトルはラウンド・ミッドナイト。あるテナー奏者を主人公にしたフランス映画であった。演奏場面もたっぷりあって、その中のワンシーンが特に印象的だった。ロネッタ・マッキーが歌う、How Long Has This Been Going On？。
それからである。この歌の入ったレコードを探し回った。この１枚もそのとき出会ったものである。だがこのレコードを気に入ったのは長ったらしい名前の曲ゆえではない。若かりし June がなげやり気味に歌う September In The Rain 。これが最高。以後、いろんな方向に目を向けて手当たり次第に集めた結果、いつのまにかレコードの数は１０倍になってしまっている。
