感涙保証、私の愛聴盤 その３２
Relaxin'/Miles Davis Quintet
さていよいよ Miles Davis の登場である。こんな順番に Miles を持ってくるはずではなかった。というのも、Miles のレコードはジャズにのめり込み始めた当初から買いあさっていて、私のレコード遍歴の初期においては大きなウェイトを占めるミュージシャンだったからである。いの一番に紹介するほうがむしろ自然なくらいの、私のジャズ観に多大な影響を与えた人なのだ。
ところが Miles のレコードでこれ１枚という形で紹介するというのがどうもできなかったのである。一番好きなのはきょう現在でも Kind Of Blue ということになるんじゃないかと思うのだが、Prestige レーベルに残した Relaxin' 以下の４部作（ほかに Steamin' Cookin' Workin'）も捨てがたい。もっと初期の「小川の Miles 」だっていい。ほかにもたくさんあって正直迷うのである。
ただそれではこの連載はすすまない。Miles は私にとって一里塚（Mile Stones）であっても最終目的地ではないわけだからここに Miles の代表作としてこのレコードを紹介する次第とあいなった。
４部作のなかでこのレコードを取り上げた理由は、もっともよく聴いた１枚だからである。なかでも If I were Bell 以下のＡ面は何度も何度もかけてミュートトランペットの魅力に引き込まれていった。ここには John Coltrane(ts) も参加しているが、まだ田舎臭くたどたどしい。むしろ Red Garland(p)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds) というリズムセクションに粋な都会ジャズの極致を感じるシリーズである。
