感涙保証、私の愛聴盤 その３１

Quiet Kenny/Kenny Dorham

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　いぶし銀というたとえがぴったり当てはまる人はそうはいない。このアルバムにおけるKenny Dorham の場合、１回目、２回目くらいでは全然そういう感じを受けないはずだ。おそらく飽きっぽい人なら２度とこんな退屈なアルバムは聴かないかもしれない。しかし運良く５回、１０回と聴き重ねることが出来れば、その人はこの男のいぶし銀たる位置を確信することだろう。

　このアルバム、タイトルどおり全編にわたって静かな演奏が続く。Miles だったらこういうムードの演奏はミュートをかけてやるだろうが、Kenny Dorham の場合はあくまでホーンの地音で押し通す。それが実に柔らかな優しい音として聞こえるところに私は感動してしまうのだ。

　アルバムジャケットに映るこの朴訥とした表情。放心状態とも見える宙をさまよう眼差し・・・。当時、彼は３５歳。まだまだ老いに入る頃ではないが音はすでに枯れはじめている。その音が暗示するかのように彼の寿命はこの後１０余年で尽きることになる。

　彼のトランペット以外に管楽器が入らないワンホーンというスタイルで、アルバムまるまるを飽きさせずに聴かせるのはリズムセクションが素晴らしいからだ。Tommy Flanagan というピアノの名手と Paul Chambers というベースの名手がいればこそなせる奇跡なのかもしれない。

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