中古レコードはぶっきらぼう（その８）
レコード探しで、ちょいと買ってみてもいいかなと思う盤が見つかったらどうするか？ いつもは、すぐに小脇に抱えずに、そっとその列の一番端に移動して置いておく。抱えると、 あとを探しにくいからである。
そうやって最後まで見て、予算と相談しながら、あれとあれとあれ、と記憶を辿っ てさっき端に置いた盤をいくつか抜き出すことになる。ときどき、記憶が薄れてもう一度 探さなければいけないときがあって焦ることもある。
そんな買ってもいいと思う盤がたった１枚しかないときは、なぜか買う気が失せているので そのまま帰ることが多い。たぶん、１枚買うのがみみっちいとする私の性格なのであろう。という より、本当にいますぐ聞いてみたいと思うほど魅力のある盤は少ないからだ。
しかし、稀にどきっとする盤と出会う。それと対面すると、胸が高鳴り、目はうつろ。もちろ んすぐに手元に置く、というより胸にかし抱く。絶対に他人には渡さない。まるで恋人のように。 そして、あとの盤を探すのはほどほどにしてしまう。もう目的はほぼ達成できたわけだから...。
あまり欲張ったら次に探す楽しみがなくなるし、強欲になったら出会いの女神に徹底的に嫌われそうな気がするのである。
アルバム名：Alcohall Presents Good Old Songs Vol.2/Various Vocalist 原盤：Capitol他(アルコホール ALP-002)
購入価格：１０５０円 店：Ｒｅｃｏｆａｎ 渋谷店
動機：勉強不足で見たことのなかったジャケットである。何気なく裏を見ると、いや はや、私の好きな歌手と歌の勢ぞろい。The Pied Pipers、Helen Forrest、Delta Rythm Boys、Doris Day。 しかもいままでに聞いたことのないものばっかりのようだ。さらに、両面合せて１８曲。なんというサービス。 値段はまるだただ同然。いつのまにかにぎりしめて、Vol.１がないか必死で探したのだった。 また、血眼になって探す盤が１枚増えたようだ。
聞いた感じ：ＳＰを音源としたものだからまったく音質は期待していなかったけれど これはいい音である。Helen Forrest の Amapola とか涙もの。Doris Day の Someone Like You は、よだれもの。Louis Armstrong と Jack Teagarden の A Song Is Born は めちゃめちゃ楽しい。Delta Rythm Boys が歌う Begin The Beguin なんて、他のボーカ ルグループでは絶対に出せないハーモニー。極めつけに甘いのは Peggy Lee の That Old Feeling。初めて聞いた The Fontane Sisters の Candy Kisses に声なし。
選曲は野口伊織と岩浪洋三というが、ライナーノーツやJAZZ本で読む岩浪の凡才ぶりからは考えられないいい監修になっている。きっと野口伊織のセンスのよさなのだろう。
アルコホールという店は実際に渋谷にあった。職場から東急ハンズの横を下っていくと突き当たりに地下に降りていく階段があって、その奥に店があったようだ。 一度入ってみたいと思っていたらいつのまにか名前が変わっていた。一度も見ぬ間になくなった店の雰囲気とレコードの雰囲気がだぶって、惜しいことをしたと思っている。
おわび：アルコホールが店を閉じたかのように書いてしまったが、これは私のとんでもない誤解だったようだ。さる方からご指摘を受けたのでここに訂正させていただくとともに、アルコホールを紹介するページへのリンクをつけることにした。あわせて今年４月に亡くなられた野口伊織さんの記念館も紹介する次第である（２００１年９月１３日）。
