中古レコードはぶっきらぼう（その28）
歩きながら口ずさむ唄というのがある。いつも決まった唄というのは私の場合ない。 そのときの気分によっても違うから、憂鬱なときには寂しく物悲しい唄を、心踊るとき にはスウィンギーな恋唄を、ということになるのが普通である。
しかし、そのときの感情によらず、頭から離れないメロディーというのもある。この唄、もちろ ん印象に残るメロディーをもっていなければならないのだが、いくつか条件がある。
まず、私が口ずさむためには、平易な英語でなければならぬということ。そして、全 部でなく一部であるということ。これはすべて私の語学力不足からつく条件である。
次に、何度も繰り返し聴いている曲であることは絶対条件。そうでなければ、音痴を 自負する私の身体のなかで再生できる経験値が得られてないわけだから。
でも、もっとも大事なことは、口ずさむといっても、けっして音を外に洩らしてはい けないということだ。それは自分の耳に達したとたん、不幸にも、まるで違う唄になり果てるからだ。
さて、きょう頭のなかにひびく唄はこれ。
セイ・イッツ・イズンツ・ソー，セイ・イッツ・イズンツ・ソー・・・・・
これがなかなか Say It Isn't So に聞こえなくて．．．
アルバム名：Dick Haymes Sings Irving Berlin MCA.England MCL 1773
購入価格：１０００円／ディスクユニオン渋谷店
動機：これも３ヶ月ほど前に買った盤の紹介になる。Dick Haymes は日本ではあまり 有名な歌手ではない。しかし、Bing Crosby 風の声で魅了するすごく実力のある歌手で あって、男性歌手の中では一番好きなひとりである。1940年代後半から50年にかけて録 音されたものを英国で編集した廉価盤であるが、みつけたとたん抱きしめてしまった。
聞いた感じ：まぎれもなく私が好きな人の声。Irving Berlin という大作曲家なのに ここに収められた曲のいくつかはまったく初めて出会う曲。How Deep Is The Ocean と か The Song Is Ended とか Cheek To Cheek などは超有名曲だけど、私の一押しは、 Say It Isn't So 。ピアノのバックで唄うしっとりとした大人の雰囲気。何度も繰り返 して聴きたい名唱というのはこういうのを言うのだろうな。
