中古レコードはぶっきらぼう（その22）
ほろ酔い加減でパソコンに向かってはいけない。４７歳になる年のはじめに学んだ教 訓である。
大掃除のつもりで不用のソフトを削除した。消してもいいよ、とｙキーをたたいた途 端、全身に悪寒がはしった。深刻な事態の予感。ディレクトリも削除していいですか？ という最後のメッセージの意味が飲み込めたのは処理が終わった後だった。消したソフ トのディレクトリの下には大事な JAZZ のデータが全部ぶらさがっていたのだ。
ここで慌ててしまったのがさらに事態を悪くしていく。MS-DOS のバージョンが3.3など という旧時代の遺物だったことも手伝って、簡単に復活できるはずのものがそうではな くなっていく。やること、やること裏目に出て奈落の底に近づいていくのがわかった。
その日から、ハードディスクに保存されているかすかな手がかりを元に、データの修 復作業が始った。フロッピーに保存していれば．．．。後悔は先にたたない。いつも後 から悔やむから後悔なのである。
根気よくパズルを解いた結果は、ほぼ満足のいくものだった。しかし、２ヶ月以上の 時間と、完全に消えてしまった５０枚ほどのアルバムのデータを再入力する根気が必要 だった。しばしば酒の誘惑が勝つこともあって、この作業はすこぶる能率が悪い。
だが、辛抱は確実に実るものだ。これで、ようやく半年ほど前に買ったアルバムの紹介もできる時間が生まれたのだから・・・。
アルバム名：The Two Of Us/Dinah Washington And Brook Benton Mercury MG 20588
購入価格：２２００円 店：渋谷 レコファン
動機：歌手で買ったのではない。理由はたったひとつ。Again という曲が入っていた から。Doris Day や Beverly Kenney や Audorie Morris が歌ったこの曲を、大御所の Dinah がどう歌っているか、期待半分、怖さ半分であった。
聞いた感じ：怖いほうの予感があたってしまった。もともと Dinah の歌声に特別の 好意を持ってはいなかった．．．いや、嘘を言ってはいけない、正直に言おう。あの 顔であの声、というアンバランスが嫌で避けていた一人なのだが、やっぱりどんなに 歌唱力があってもあの声とビブラートをきかせすぎた歌い方は好きになれないなぁ。 Brook Benton って男性歌手は初めて。自分で曲も作っているソングライター。うまい のだろうが、これといった特徴のない人である。
