感涙保証、私の愛聴盤 その８０

Live In New Orleans/Woody Herman Orchestra

Woody Herman　数あるアメリカのビッグバンドの中でも Woody Herman のバンドは比較的新しい方になる。このバンドを有名にしたのは、Stan Getz を代表格とするクール派のテナーサックス奏者を集めて吹きこんだ Four Brothers というバップ前期の曲だろう。ところが私がこのバンドに心惹かれるのはそれ以前、いや、もっと正確に言えば、１９５１年から５２年にかけてのこの頃だけ。

　蛇足ながら１９５１年と言えば、私の生まれた年。だから好きというわけではなくて、理由はこの時期に唄っていたバンドシンガーにある。Dolly Houston というのが彼女の名前。ほとんど無名の歌手である。無名であるにはそれなりの分けがある。歌が下手なのである。遠目に写真をながめてもとびきりの美人と言うタイプではない。でも私はそれでよかったと思っている。独り占めできるからだ。

　歌を下手に思わせているのは音程の不確かさにある。音が微妙に揺れて危ういこと限りない。安心して聴けない歌手の代表格で、レコードだと分かっているのに、はらはらどきどきしなければならんのである。ピアニストの Mal Waldron と同じで、聴くたびにスリリングな気分を味わえる。

　それでも聴いてしまうのは彼女の声ゆえ。古い録音なのだけども、耳元でささやくがごとく伝わってくる艶めかしさ。最初に聴いた時は、耳たぶに息を吹きかけられて思わずぞくぞくとしたものである。That Old Feeling,I Wan't Cry Anymore,Sometimes I'm Happy の３曲でしか歌声は聴けないけれども、それだけで大満足の１枚なのである。ああ、紹介しなければよかったかな・・・。

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