感涙保証、私の愛聴盤 その７８

Dream Dancing/Ray Anthony

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　ジャケットが中身以上に有名な盤を取り上げる。この盤を有名にしているのは「ジャズ批評」という隔月刊雑誌での特集記事、『最後の珍盤を求めて』のコーナーで少なくとも二回は紹介されているというとことだろう。

　中古レコード屋めぐりで私の記憶に残っていたのもその記事があったから。新宿のとある老舗レコード店で見つけた時は、多少高くても買う気持ちに迷いはなかった。その点、『最後の珍盤を求めて』の記事というのは罪作りなところもある。思い込みで生きているマニアの独断なので、珍盤を名盤にまつりあげることもあれば、名盤を駄盤に落とし込むこともある。

　この音楽をジャズと言えるかどうか意見が分かれるところだろう。オーケストラをバックにしたトランペットなのだが、全１２曲にわたって、けだるく甘いムードに支配されている。最初はジャケットを見ただけで名盤と疑わなかった。この白人好みのロマンティックな情景。針を落として再生された音のけだるい雰囲気とマッチして、いい盤を手に入れたと思ったものだ。

　しかし、何度も聴いて分かったのはこういうことだ。音楽的には全神経を傾けて聴くような盤ではない。耳を傾けて聴こうとするとすぐにあくびが出るほどメリハリがないのである。Ray Anthony というトランペット奏者に Wynton Marsalis のようなテクニックを求めるのは間違いだし、Louis Armstrong のような人間味あふれる演奏を期待しても無理なのである。ただし、カクテルグラスを片手に夢見心地のひとときが欲しければ最高のバックミュージックになることを保証しよう。それこそ月でも出ていればまさに Dream Dancing・・・・。

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