感涙保証、私の愛聴盤 その７７
Benny Goodman On The Air Vol.2,Elgin Revue
映画ベニー・グッドマン物語はジャズ映画のなかではもっとも有名だろう。これを見ればグッドマンの音楽も人となりも好きになってしまうのは仕方がない。音楽の場面では Swing Swing Swing を演じて、クラシック好きであろうと思われるカーネギーホールの大観衆にステップを踏ませるところなどは圧巻である。そして人間性を描いた場面では努力家、情熱家、愛妻家というイメージを植えつけさせられる。出来過ぎのような伝記映画である。
ところが物の本によるとグッドマンという名前とは逆にバンドリーダーとしての彼は身内にとても嫌われていたという逸話が多い。なかでも相当のケチだったという噂は有名だ。それが本当かどうかは今では知る由もない。経営者として厳しく雇用者に対応すればそういうことだって言われるだろうとは思う。ただ、このアルバムでバンドシンガーを務めているヘレン・ウォードに言わせればそれはぜんぜん違うのだ。彼女にとってグッドマンは生涯あこがれの人だった。
というのも、晩年の彼女がテレビのインタビューに答えたビデオを見たことがあるからだ。おばあさんになったウォードは先に冥土へ旅だったグッドマンの仲を恋人どおしだったと認めていた。しかしそれは不倫という関係ではなくあくまで心の中でのものだったようである。
そんなラブラブ関係にあった二人の演奏がラジオのエアチェックで残されている。こういう録音は音質は悪いけれども、当時のＣＭ入りでラジオ番組そのままを聞くことができるのが嬉しい。レコードショップではこんな盤はタダみたいに安く叩き売られているが、安いというだけで敬遠しているとすればまことに惜しい感性である。
