感涙保証、私の愛聴盤 その７６

Dedicated to You/Tommy Dorsey Orchestra

Tommy Dorsey　Ｓｗｉｎｇ Ｂａｎｄ の中にはボーカリストに恵まれて実力以上に有名になった楽団というのがある。Tommy Dorsey 楽団はその最たるものではないか。その立役者というのが Frank Sinatra だ。彼はマイクロフォンの発明時期という好機にも恵まれて、ささやくような歌い方で若い女性達を魅了し、絶大なる支持を受けた。それまではメガホンなどを使ってできるだけ大きな声を出さないと男のバンド歌手は成り立たなかったのだから、感情表現を楽にできるマイクの使用はすごく革命的なことだったことが分かる。

　後年、数々のヒット曲を生み、その成功でアメリカの芸能界のボス的な位置を占めることになった彼のデビューが Tommy Dorsey との吹き込みなのである。このアルバムでも２曲ほどで彼の歌声が聞かれる。しかし、この時期のシナトラはちっとも上手くない。甘い声であることは否定しないが、声にまだまだ深みが足りない。Tony Bennett のところでも書いたけれども、男性歌手の若い頃の歌というのは心の琴線に響かない。

　それでいてなぜこれが愛聴盤かというと、一人の若い女性歌手が歌ってるんだよね、Ａ面の最後で・・・。曲は Matt Dennis が書いた Will You Still Be Mine？。当時の有名人の名前が盛り込んであって歌詞も面白いのだが、これを歌う Connie Haynes の声の可愛いことといったら言葉ではなかなか言い表せないのだ。ちょっと舌足らずの感じで、なかなかお色気があって、いいねえ・・・。Connie Haynes は他にも録音を残しているがこの曲を超えるものはいまだ聴いたことはない。

　彼女の他にも Pied Pipers や Jo Stafford の歌も聴けるこの盤、寄せ集めと馬鹿にしては損をする。とてもとても中身の濃い１枚なのだ。

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