感涙保証、私の愛聴盤 その７５

Juke Box Saturday Night/Glenn Miller Orchestra

Glenn Miller

　またまた１本のヴィデオテープを紹介することから始めよう。字幕入りのアメリカ映画。だからストーリーは良く分かる。邦題は「グレンミラー物語」。グレン・ミラーを演ずるのは二枚目半の男優ジェイムズ・スチュワート。ヒッチコック映画「裏窓」でのどこかコミカルな演技が印象的なあの俳優だが、難しい音楽家役を器用にもこなしている。それにも増してこの映画では共演のジューン・アリソンが清楚でとてもいい。グレン・ミラーの音楽にぴったしの爽やかなキャスティングだ。

　あらすじとしては音楽的成功物語の中に甘いラブストーリーが織り込まれていてホームドラマとしては絶対のお薦めである。もちろんミラーは第二次世界大戦の末期に飛行機事故で帰らぬ人となっているのでお涙頂戴の場面も出てくるのであるが、それもよく効いたワサビになっている。

　グレン・ミラーが活躍した１９３０年代後半から４０年代前半のヒット曲を集めたアルバムがこれだ。一番有名なのがチャタヌーガ・チュウ・チュウという曲だろう。コミカルな歌詞にもかかわらず古き良きアメリカを歌い上げて郷愁を誘う。なんてたって蒸気機関車の時代なんだからねえ・・・。そして、ジュークボックスの前で踊る若いカップルをあしらったこのアルバムのデザインにしても、いまでは凶暴なドンと化している国のまだ初々しい青年時代を思わせる図柄である。

　人間の一生に一番よかったと思う時期があるのと同様に国にもそれがあるとすれば、アメリカにとっては第二次世界大戦直前の３０年代〜４０年代前半がそれにあたるのではないか。ちょうどそれはスイングジャズの全盛期。グレン・ミラーの死とともに古き良きアメリカが変質を遂げていく時代に入っていくことになるのだろう。

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