感涙保証、私の愛聴盤 その６９

Live In Tokyo/Thad Jones & Mel Lewis Orchestra

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　私がジャズにはまり込んでいった70年代前半はビッグ・バンドは下火を迎えていた。マイルスが電気楽器にとりつかれて妙な電子音が飛び交い、片方ではチャカポコチャカポコのフュージョン音楽が幅をきかせていた。そんな時代背景のなかで５０年代ジャズを探しながら聴いていた私に当時のビッグバンドは無縁であった。中学校でやっているブラスバンドの音楽程度という認識しかなかったのだから・・・。

　しかしあるとき、たまたまサド・メルオーケストラが来日したときのライブ録音を聴くことがあった。ＦＭの番組だったのだろう。サド・メルとは Thad Jones と Mel Lewis という二人のリーダーに率いられたアメリカのバンドだった。当時の人気第一位のバンドだと知ったのはずいぶんあとだった。

　ダンスバンドのような甘ったるさは微塵も無く、受けのいいスタンダードソングに流れず、洗練されたアレンジのオリジナル曲、しかもソロイストを前面に出したアドリブ重視の演奏スタイルに驚いた。これまでビッグバンドジャズに抱いていた感想は思い込みに過ぎなかったことを知った。とにかくむちゃくちゃ聴いて楽しいのだ。

　ライブ録音だから観客のざわめきも一緒に聴くことになるのだが、これもノリにのった反応で、ソロイストもそれに応えてテンションがあがる。この相乗効果はスタジオ録音では絶対不可能な興奮を産み出す。きょうにいたるまでこのバンドを生で聴くことは無いのだが、このＬＰをかける度に、観客とともにクビを振りつつ手拍子を打っている自分を発見するのである。

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