感涙保証、私の愛聴盤 その６６

Cooking The Blues/The Buddy DeFranco Quintet

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　Verve のジャケットには美人が多い。演奏者や歌手の顔は稀で、たいていは Player とは関係のないモデルのようなタイプだ。年代でいえば1950年代中ごろから後半にかけてこの手のジャケットが多く、たとえば Oscar Peterson、Billy Holiday、そしてこの Buddy DeFranco のアルバムによく見られる。

　ジャケットにもいろいろだが、演奏家の写真という素直なものから、収録された音楽の雰囲気をイメージさせる芸術的なもの、また別な側面からは、音楽の中身よりもジャケットで買ってくれることを目的にしたような物まである。このジャケットはまさしく一番最後の分類になるだろう。

　おもちゃのクラリネットと人参をガラスの鍋に入れるというアイデアはタイトルによるものであろうが、いささか直截的で幼稚な気がしないではない。しかし衆目はそこに不快感を感ずることなく後ろに控える女性の顔に注がれるはずだ。よく見れば厚化粧が過ぎた水商売のお姉さんのような気もするが、半分閉じかけたまぶたと、息を吹きかけんばかりの生々しい口元のせいで、目に焼き付いて離れない仕掛けである。

　実は愛聴盤ということで紹介しながら、このアルバムに関しては愛観盤と言ったほうがいいかもしれない。演奏は悪くはないのだがジャズの肝要であるところのスリルを期待すると間違ってしまう。酸いも辛いもかみ分けた大人のための奥深いジャズと心したい。ジャケットを見ながら聴くに限る１枚である。

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