感涙保証、私の愛聴盤 その６５
Warm Woods/Tke Phil Woods Quartet
Phil Woods のよさはこぎみいいテンポだろう。ジャズのアドリブではときどきためらいを感じるフレーズを聴くことがあるものだが、彼の演奏で一度もそんなことを思ったことがない。実に思い切りがいいと言おうか、屈託のない性格ゆえの演奏スタイルであろう。内面の苦悩がにじみ出るのも芸術だが、これはこれで気持ちがいい。
Phil Woods は白人ながら Charlie Parker の後継者、模倣者という評価がある。私生活でも Charlie Parker の未亡人を妻に迎えたのだからそれは彼にとって不愉快なことではなかったかもしれない。ただ、彼の演奏を聞きながら思うのは、Charlie Parker という不遇の天才が辿った道を彼は辿らないだろうという確信である。
悲壮感がないジャズを一歩下に置く評論が流行った時代もある。コルトレーンがもてはやされた緊張感のある一触即発の時代状況の元で・・・。その評論スタイルからすれば Woods は Parker を一生越えられないことになる。だが彼らの全盛期から５０年近く経った今、演奏を含めてどちらの生き方に一票を投じるかとなると、私は Phil Woods に入れてしまうだろう。経験的に、元気を与えて欲しいときに聴くのは、多くの場合、Phil Woods の気分なのだ。そしてこのアルバムは、後期のヨーロピアンリズムマシーン時代の高揚した演奏を彷彿とさせる若き Woods の代表的名盤である。
