感涙保証、私の愛聴盤 その６３

Pike's Peak/Dave Pike

---

　思えば長い道のりだった。このジャケットが気になり出してどれくらいたった頃だろう。ずっと探し続けてきた努力がある日突然実るときがきた。それは昼休みに職場近くの中古レコード屋を覗いたときだった。めぼしいものがあったら帰りに買って帰るか、という軽い気持ちで立ち寄っただけだったのだが、ぱらぱらとめくったレコード棚の中にこのジャケットを見出したときは心臓が破裂せんばかりのショックであった。そのときの鼓動の高まりは昨日のことのように覚えている。

　実に実に長いことこのレコードを探してきたのだ。ジャケットの右上隅に少し傷があるけれど気になるほどではない。すばやく胸にかし抱くとそのまま外へ・・・いや、いかんいかん、レジへ。いくらだったか今ではしかと覚えてはいないが、たぶん片手近かったのではないかな。この盤に関しては高いか安いかを判断する余裕などなかった。たぶん一万円でも買ったかもしれない。

　それほどこいつに惚れた理由はいったいなんだったのだろう。この秀逸なデザインだけでもなかったはずだ。今でこそＢ面に入っているベサメムーチョのスリリングな演奏に背筋がぞくぞくするほどの感動を覚えるのだが、当時はこのレコードの中身についてまったく知らなかったのだから不思議と言えば不思議である。たぶん、ジャズの神様が、レコード収集狂いの入口にいた私をあわれんで、真の名演奏へと導いてくれたに違いない。そしてこう教えてくれたのだ。レコードは集めるもんじゃない、ひたすら聴くものだよ、と・・・。

---