感涙保証、私の愛聴盤 その６２

Crazy Baby！/Jimmy Smith

---

　オルガンという楽器にいい印象はない。それは小、中学校、いや今にいたるまで学問としての音楽に面白みを感じないことに起因する。通信簿では３がほとんど、２をつけられたことも１回あった。私の小学校時代、音楽の授業といえば、教室に常に置かれていた小さなオルガンが使われていた。そう、私にとってはオルガンは嫌な授業の象徴だった。

　そのオルガンなる楽器でジャズを演奏する人がいることは知ってはいたが、上記のような経験からこの楽器での録音を長らく敬遠していた。いまさら小学校の教室の音を思い出したくなかったのである。歯切れが悪いだらだらとした音の連続、そのどこがいいのさ・・・。それが、どういうきっかけでJimmy Smith を聴くことになったのか定かではない。しかし、いつのまにかこのえぐい音に惹かれてしまっていた。

　オルガンの音がそもそも違うのだ。ピアノのようにはいかないけれども、弾く人が弾けば、歯切れがいいではないか。そして実に音がパワフルというか土臭い。黒人霊歌がオルガンによって育まれたように、黒人社会の重い歴史を醸し出せるのはオルガンの太い音色だけかもしれない。多くの絶望を乗り越えて歌い継がれてきた「ジョニーの凱旋」はJimmy Smith の洗練されたオルガンで永遠の命を吹き込まれたのである。

---