感涙保証、私の愛聴盤 その５８
Proof Positive/J.J.Johnson
私のオーディオ遍歴は、まずもっとも安上がりなＦＭチューナーとヘッドフォンで始まった。次に購入したのはカセットテープデッキ。この組み合わせで次々にＦＭ番組を録音し、未知なる音楽をむさぼり聴いた。２０代はじめのことである。
最初のころはクラシックも聴いたし、ビートルズやカーペンターズもあった。不思議なことに同世代が好きだったロックやフォークははじめから聴きもしなかった。体質が合わなかったのだろう、そういうジャンルはいまでも不得意だ。そのうち録音した数多いテープのうちからだんだん聴くジャンルが絞られてきた。それがモダンジャズだった。しばらくして、スピーカー、アンプが加わっていく。レコードプレイヤーを揃えたのはちょうどジャズにのめりこんでいくころだったように思う。したがって私のレコードは三枚の交響曲以外はジャズばかりなのである。
さて、そのころ録音したテープのなかで好きになったものをレコードで購入していくのはごく自然なことで、私の場合、マイルスやコルトレーンやマル・ウォルドロンのレコードが増えていったのはこれまで紹介してきたとおりである。実は、このJ.J.Johnson のレコードには、ＮＨＫ−ＦＭで放送されたトロンボーン特集の録音のなかで一番印象に残った曲が集録されている。
しかし、これを探し出すのは大変だった。録音したテープには曲目のほかには何もクレジットをつけていなかったのである。ＮＥＯという曲名だけでトロンボーン奏者のアルバムを探していったのだが、このアルバムに行きつくまでにほぼ１０年くらいの年月が流れるのである。それを見つけた夜、Impulse レーベルの重厚なジャケットを見ながら、おそるおそる針を落とすと、１０年前のJ.J.の熱演が懐かしいほどに再現されて不覚にも涙ぐんだのであった。
