感涙保証、私の愛聴盤 その５７

Dick Morgan At The Showboat

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　ジャズの本場はアメリカ。そのなかでも東海岸だったらニューヨーク、西海岸ならばロスアンジェルスかサンフランシスコと相場が決まっているのがジャズの世界。しかし、このレコードが録音されたのはなんとアメリカの政治の中心地、首都ワシントンなのだ。この土地柄からお堅い演奏をイメージした人は、下手をすると聞かず損に終わってしまうかもしれない。でもこの演奏ほど聞く者を楽しく爽快にさせてくれる音楽はない。

　ピアノは Dick Morgan ＝無名に近い。ベースは Keter Betts ＝ああ少し聞いたことはある。ドラムスは Bertell Knox ＝まるで知らない。このピアノトリオ、名前はほとんど売れていないが、そのスピード感あふれる演奏たるや、歴史に残るピアノトリオの名盤と呼ばれる演奏をことごとく蹴散らしてしまうかのように勢いがある。

　とくにドラマーの Bertell Knox 、この人のブラシは凄い。いや凄すぎる。彼にスティックは必要ない。ザクッ、ザクッと歯切れいいブラシの音が快調なテンポでリズムを刻めば、Dick Morgan の弾く鍵盤が跳ねること、跳ねること。そしてブラシのバシッという１発で、またまたテンションが上がる。このときの感動は聴衆の歓声によっても裏付けられている。ライブレコーディングのよさは盛り上がった客席の雰囲気が手に取るように分かるところだ。

　そしてピアノを弾きながらの唸り声。Bud Powell は自分の思った音が出せずにもどかしくて唸っていたが、Dick Morgan の唸りは、もう気持ちがよくて手が止まらないよ、という嬉しい悲鳴のような気がする。

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