感涙保証、私の愛聴盤 その５５

Jutta Hipp At Hickory House Vol.1 & 2

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　ユタ・ヒップ。ドイツ人である。見てお分かりのとおり女性である。しかも若い。美人かどうかは分からない。彫りの深い顔であることはみてとれるが、はっきり顔が分からないところがこのジャケットのミソのようである。

　Jutta Hipp は第二次世界大戦後のドイツでジャズピアノをやっていた。それをアメリカの著名なジャズ評論家、レナード・フェザーがみそめた。現地での録音はアメリカでもプレスされた。数年後、彼女は海を渡ってニューヨークに来た。そのときのライブレコーディングが２枚のアルバムに収められている。彼女はこの２枚のアルバムとあと１枚、Zoot Sims との共演盤を残してアメリカを去っていった。

　一連の出来事はすべて１９５０年代後半のことである。彼女のその後の演奏活動はまったく紹介されていない。

　疾風のように現れて疾風のように去っていくのは月光仮面だったが、彼女もニューヨークのジャズシーンではそのような存在だった。アメリカ人以外の人間が、しかも女性が、モダンジャズの爆発時期にニューヨークで活躍した例は、この人ともう一人、秋吉敏子くらいしかいない。

　秋吉敏子もピアノであった。ただ似ているのはそこだけで、秋吉の場合は生活基盤をアメリカに置きつつ自分の音楽を徐々に開花させていった。Jutta Hipp は女盛りの頂点と音楽性の頂点を重ねて、あっという間に燃え尽きてしまったかのようだ。そんな感じを受ける力強く印象深いピアノである。

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