感涙保証、私の愛聴盤 その４９
Helen Merrill With Clifford Brown
いきなりでなんだが、ヘレン・メリルという歌手を私は好きではない。声がだめだ。音程がずれるというわけじゃないのだけど、こんなメリハリのないハスキーボイスは嫌いだ。むかし、青江美奈という歌手が日本にいたけれども、ヘレン・メリルはニューヨークの青江美奈という別名で宣伝されていた。私が思うに、青江美奈のほうが少しましなのかなあ・・・。
そんな歌手がなにゆえこのコーナーに登場するかと言えば、Clifford Brown というトランペットの天才が彼女のバックを務めているからである。それ以外の理由はまったくない。ただ、このアルバムはヘレン・メリルを語るときに必ず引き合いに出される超有名盤で、いかにもヘレン・メリルの個性的な声で評価を得ているような印象を持たれるのだ。これは大変な誤解である。ヘレン・メリルは歌手としてはたいしたことはないのである。多少、ほかの女性歌手とは違った声音の持ち主といったところにとどまるだけなのだ。
ジャズという音楽をまっとうに評価する力ということになれば、日本というところは変な土地だ。妙な判官贔屓と言うのだろうか、先入観が先に立って音楽性による評価は後回しという傾向が強い。このヘレンに対してもそうで、たいした歌唱力があるわけでもないのに来日すればスター扱い。それもこれも、このアルバムの存在がそうさせているのである。日本でヘレンが売れっ子でいるのも、本当は Clifford Brown という夭折の天才がいたからに他ならない。
しかし、このジャケットだけはいいセンスをしているよなあ・・・。
