感涙保証、私の愛聴盤 その47

Chet Baker Sings and Plays

Chet Baker

 トランペットが吹けて歌も上手い、といったら誰しも思い浮かべるのがサッチモとこの人、チェット・ベイカーである。しかし演奏スタイルも、歌い方も、声もまったく違う。人相、風体も違う。似ているところを探すのが難しい。サッチモの声はご存知の様にダミ声。一方のチェットは女性の声と聞き間違うような澄んだ声。一方はおどけ者、片やクールさが売り。

 この対照的な二人なのに同じくらい好きな歌手というのがどうにも説明できないでいる。音楽は理屈ではないからしょうがないと思ってみても、私の心の琴線に触れる理由を探して久しい。最近、言葉の限界ということに気づきはじめていることもあって、これ以上、多言を弄すまい。

 このアルバムはチェットの歌物としては2番目にいい。1番目はもちろん Chet Baker Sings であると思っている。ただこの2番目のアルバムをここで紹介するのは探し出した苦労も加味してのことだ。

 私にとって神田神保町は東京の中でも一番好きな界隈である。本屋も多いが中古レコード店も多い。登山用具店もあって1日は楽に暇を潰せるところである。その神保町に、あまり有名でないちょっと変わった中古レコード屋があった。2階にある売り場では一応アルファベット順にレコードが整理されているのだが、中身は玉石混交。500円でも買いたくないような駄盤に一万円という値がつけられていたり、オリジナルの程度のいいものが3千円で手に入ったりと、時間があればお宝捜しに絶好の店だった。そこで見つけたのがこれ。多少痛んではいるが一応オリジナル盤のようである。いまではいくら払ったのか忘れてしまったが、きっといい物見つけた、といって胸にかし抱いた盤だったような気がする。


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