感涙保証、私の愛聴盤 その４２
This Is Pat Moran
さあて、この脚、いや、このアルバムについて書かなければいけない時がきた。どうだろう、この脚のライン。音楽の中身をそっちのけにしてジャケットに話題を集めるのは本意ではないが、このアルバムに限っては、まずこのジャケットに対する私の思い入れを白状したほうがいいと思う。実に私好みのゾクっと来るジャケットである。
これを買ったのは鹿児島だった。中古ではなく新品である。今でもあるかどうか知らないが西鹿児島駅近くの小さなレコード屋だった。すでに世の中の流れはＣＤ全盛で、ＬＰレコードなど置いている所は大都市でも少なかったはずだ。出張の折、レコードＭＡＰを頼りに探し歩いて見つけたこの店に、もはや売り切れていたはずのこのレコードがひっそりと置いてあった。
パット・モラン。女性ピアニスト。この演奏はオーソドックスなトリオ演奏である。ただ、女性と思って聴くとタッチの力強さに驚くことだろう。パット・モラントリオはこのアルバムのほかにも何枚か出していて、Bethlehem 盤などは再発されるまでずいぶん探し回ったものだ。Bev Kelly という女性シンガーとの共演盤もあるし、そのときはこのメンバーがバックコーラスをつけている。これからも分かるように、かなりのエンターテイメント的素質をもったメンバー構成であった。
再びジャケットに戻ろう。赤いハイヒールが素晴らしい。背景に二人の男性が見える。ベーシストとドラマーだろう。で、この脚がパット・モラン本人のものかどうか、コメントはない。ただ、JAZZのアルバムに代役を出して撮影できるような音楽家は皆無と言ってよく、この脚が力強いピアノタッチを聴かせる本人のものと確信するに及んで、いよいよ贔屓になる若いおっちゃんなのであった。
