感涙保証、私の愛聴盤 その３９

Speak Low/Walter Bishop Jr.

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　ピアノトリオのアルバムには腐るほどの駄盤がある。おそらくガイド本がなければ６畳一間がそんな盤に埋もれてしまうほどピアノトリオの演奏は多い。有り余るお金のない若い頃、いや、いまだって金はないのだが、数あるアルバムの中で買うに値する盤を見つける手っ取り早い方法は、お薦めジャズ名盤１００枚とかいうような本なのであった。しかしこれがあると逆に買い難いこともある。

　まるっきりの初心者ならば悩むことはない。順番に買っていけばいいだけだ。しかし、なまじジャズ通の端くれになったような意識に捕らわれると、レジの女性の、いまさらそんな超有名盤を買うの？という目で見られたくないばかりに、妙に珍しい方に手が伸びることもある。こんなコレクター心理をうまく描いたラズウェル細木の漫画は実におもしろかった。

　この Walter Bishop Jr. のアルバムがそういう超有名盤だというわけではない。ではまったくの無名な盤かというとそうでもない。いっぱしのジャズ通の人ならばまず知っているという類のものである。こういう盤は買いやすい。おたく、いい趣味してますね、と言われそうな誉れ高き盤といってもいい。したがって私が名盤収集に凝った頃、まずはこういう中堅どころから買い始めたのであった。

　ところで内容だが、ピアノ以上に注目すべきはバックを務めるベースの Jimmy Garrison とドラムの G.T.Hogan である。とくに Hogan のブラシさばきは見事というほかない。かの寺島靖国がこの盤を評したように、バックの素晴らしさでもって歴史に名を残した名演の一つである。

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