感涙保証、私の愛聴盤 その２６

Art Pepper Meets The Rhythm Section

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　Art Pepper。アルトサックス奏者。彼も麻薬に溺れた一人である。しかしそのことに多くは触れずにおこう。書くスペースがなくなってしまう。

　５０年代から６０年代にかけてアメリカ西海岸で活躍したのは白人ジャズプレイヤーが多い。New York で黒人プレイヤーの活躍が目立ったのとは対照的である。ジャズのスタイルもちょっと違っていた。言葉ではうまく表現できないが、ウイスキーの香りがむんむんする東海岸の演奏スタイルに対して、西海岸のそれはワインのようなものである。

　ウイスキーをカッとあおればすぐに身体に火がつくけれどダウンするのも早いもの。西海岸のジャズはすぐに身体が熱くなることはないけれど徐々に気分が良くなってくるものだ。一般的にはそういう喩えで間違いないのだが、例外だってある。New York を本拠地としたかの Miles Davis もそうだし、この Art Pepper もそうだった。

　Pepper（とうがらし）という名のごとく、彼の演奏は聴く人を瞬く間に熱くさせるのだ。しかし惜しむらくは西海岸の演奏仲間との共演ではなかなか彼の真価を発揮できる場はなかった。このアルバムでは当時最強と言われた Miles Davis Quintet の Rhythm Section がバックを務めている。その結果、東と西のスタイルが実にうまく溶け合った名演の数々が生まれた。Art の放つ鋭い音をどっしりとした力量感のあるリズムセクションが受けとめ、そして我々に向かって珠玉の音の連なりを打ち返すのである。

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