感涙保証、私の愛聴盤 その３

Left Alone/Mal Waldron

Mal_Waldron 　私が初めて買ったレコードは Miles Davis At Filmore West である。しかしこれはほとんどまともに聴いたことがない｡電気楽器に冒されてしまった Miles なんぞおもしろいわけがないのだ。なぜ買ったのかは判然としないが、今にして思うと、最初に買うときの異様な興奮が正常な判断力を奪っていたのだろう。迷いに迷ったあげく１９７３年当時の Miles の新作であった１枚をレジに持っていったに違いない。レコードプレイヤーを買ったその日にとにかく何か１枚欲しかったという思いだけが印象的な１枚だ。

　１枚目で懲りた私は、さすがに２枚目を買うときには店に入る前に対象を絞っていた覚えがある。ＦＭで録音し、繰り返し聴いて気に入ったプレイヤーのレコードだけに絞った。Mal Waldron というピアニストはその中の一人であった。

　テープで聴いていた Mal はソロピアノだった。しかし、このレコードのＡ面１曲目は重いピアノのイントロからいきなり印象的なアルトサックスが唸る。ぷぷぷ〜、ぷ、ぷぷ〜、ぷぷぷ・・・。

　Jackie McLean が放出する悲しみの極致の音色。もう鳥肌がたって、しばらくこの１枚だけをず〜っと聴いていた２０代の私だった｡
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