すーすーすっと

９６年５月２４日

　出張先の小倉のホテル。何を思ったか、一人の酔っ払いのおじさん。浴槽のなかで突然毛を剃り始めた。どこの毛か？生まれてから一度も剃刀を入れたとこのない、そう、脛の毛である。

　このおじさん、先日の自転車レースで走っている人のほとんどがつるつるの脛を見せているのを知ったのだ。雑誌では、一流の選手ともなれば足の手入れの必要性から、毛無し状態であることを知っていたけれども、こんなに一般的だとは知らなかったのだ。毛脛を剥き出しにしているとちょっとばかり馬鹿にされてるような雰囲気を感じたのだった。

　このおじさん、ロードに乗り始めて１年経たないのだが、かっこだけは一人前に早くなりたくて、酔っ払った勢いで剃刀を手にしたのである。そう、見栄っぱりの中年なのだ。

　このおじさんの価値観では男は毛深いほうがより男らしいのであって、おかま（けっして軽蔑して言っているのではない。単に嫌いなだけ）のような真似は死んでもできないと考えていたのであった。しかし、皆がやっているのなら、どうにでも価値観など変えられるものである。

　さて、無事足に傷もつけずに剃り終えたおじさんの感想は？

　つるつるして意外と気持いいが、ちょとばかり、すーすーすっと。

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