中古レコードはぶっきらぼう（その16）
オリジナル盤をこよなく愛する人がいる。音の良さがぜんぜん違うのだそうだ。し かし私には判らない。復刻盤や国内製作盤との違いを際立たせるようなオーディオ 装置など持たないからだ。むしろ、同じ値段なら、スクラッチノイズの少ない国内 盤の方が断然いい音で楽しめると思う。
そんなオリジナル盤音痴の私でも、アメリカのオリジナルジャケットの良さだけは 分かる。光沢のある分厚いジャケットには複製盤のチャチさは微塵もない。立てて いるといつのまにか曲がってしまう復刻盤や、それ以上にふにゃふにゃのヨーロッ パ盤などにはない、これぞ Made In U.S.A という無骨なまでの思い入れを感じるこ とができる。
だが、違いはそれだけではない。本当の魅力は匂いである。いくら紙を厚くしても、 どんなに印刷を精巧にしても、これだけは真似ができないと思う。ジャケットの中か ら漂ってくるなんとも言えぬ甘い香り。おそらく紙の製造過程で入れられた香料の匂 いなのだろうが、私には５０年代のアメリカの匂いそのもののような気がしてならな い。まだ見ぬアメリカだけど、なんと懐かしい匂いなのだろう。
アルバム名：Ballad Of The Blues/Jo Stafford Columbia CS 8139
購入価格：２９５０円 店：渋谷 レコファン
動機：タイトルに合せたブルーを基調にしたジャケットだ。くっきりと浮び上がる オレンジ色のブラウスを着て横向きに座る Jo Stafford が真ん中に。美人という顔で はないが、おちょぼ口と大きく弧を描いた眉には個性を感じる。残念ながらオリジナ ル盤ではないが、ちゃんとあのアメリカの匂いがする。
聞いた感じ：ブルースの曲を組合わせた文字どおり組曲風のアルバムである。最初 は、げてものの類かと思ったが、聞いているうちになかなか魅力を含んだ盤だと分か ってくる。Paul Weston のバックも The Starliters という男性コーラスも雰囲気が いい。Doris Day が出演していた Young Man With A Horn という映画で、主人公の 師匠の葬儀のときに流れる曲、Nobody Knows The Trouble I've Seen が聞けるので 嬉しい。Jo Stafford のアルバムではあまり有名な盤ではないけれど古き良き時代の アメリカの匂いがする好盤である。
