中古レコードはぶっきらぼう（その13）
通常設けてある新着コーナーとは別に、段ボールの箱が床に連なっているのを見つ けたときはドキッとする。たまに入庫が大量にあった証拠で、こんなときは早く探 せば掘り出し物が見つかるチャンスが増えるからだ。
しかし、これも当たり外れがある。個人のコレクションがどっと出たような場合は、 １箱見ただけでコレクターの趣味の善し悪しが瞭然とする。
もっとも悪いパターンは、ジャズ名盤１００選のような本に出てくるようなお馴染 み盤がずらずらと顔を揃えているときである。おそらく先生方ご推薦の有名盤を手 に入れたところで飽きて手放されたコレクションだろう。
こんな山には私が探しているようなお宝はまず隠れていない。集め方に個性と独創 性がないので危ない盤に手を出すはずもなく、きちんと整理され過ぎたようなコー ナーと同じで魅力を感じるものではない。
超有名盤もあるけれどもすごく妖しい駄盤−たとえばジャケットは魅力があるのだ けども聞いたこともないアーティストがぞろぞろクレジットされているものや、好 きな歌手だが見たこともないようなジャケットで装いをしているもの−が、ところ どころに混ざっているときは、愛しき恋人に会えるような期待感でたかぶっている 自分がそこにいる。
しかし、この集中した作業はすごく疲れるのだ。ずっと、和式トイレに屈んだよう な格好で、抜き差しする間のちらっと見えるジャケットをすばやく蓄積されている 画像情報と比較判別する緊張感が要求される仕事だ。一通り終わって立ち上がった ときは血がど〜っと下って、身体のしびれとともに虚脱感を味合うわけで、全力を 出し切ったスポーツのあとのようである．．．。ん、ちと大げさかな。
アルバム名：Blame It On The Bossa Nova/Eydie Gorme Columbia CL-2012
購入価格：２０００円 店：渋谷 ディスク・ユニオン
動機：デビュー直後の張りのある健康的なお色気のある声は失せてしまったけれど、 Eydie Gorme は本当にうまい歌手である。アップテンポの曲よりもしっとりと歌いこむ バラードに魅力を感じているのであるが、もともとラテン系に強い歌手だから、ボサノ バも悪くはないはずで、やや厚化粧のオバＱみたいなジャケットには若干の抵抗を感じ つつ、しっかり抱え込んだ１枚である。
聞いた感じ：ちょいとハイノートが苦しくなったころの年代を１曲目の One Note Samba で嗅ぎ取る。２０代前半の歌を集めたコーラル盤から１０年ほどたったころ、 ABC-Paramount から Columbia に移籍してすぐの１９６３年の録音らしい。Recado Bosa Nova や Desafinado など、いわゆる有名なボサノバはいいが、Moon River とか I Remember You のような曲までボサノバにするのはどんなもんだろう。バックはオー ケストラだが、Clark Terry やテナーの Boomy Richmond のソロもところどころで聞 ける。しかし、ちょっとラテンパーカッションのチャカチャカが耳につくしつこさで 疲れるな。
