忘年横丁 in 老越路峠
私にとってさ〜けりんぐ開眼の年となった９７年も暮れようとしていた。ありきたりの忘年会では飽き足らないさ〜けりすとの元締め、55kazさんが呼び掛けたオフがこれである。集合場所はＪＲ桐生駅。時間は最初９時という案内が９時半となった。なんとなれば、このＪＲ桐生駅、とんでもなくアプローチが不便なのである。まともに両毛線経由では４時間はたっぷりかかろうということで、東武鉄道の利用か自走という選択となった。
前日の深酒が尾を引かなければ、元来、健康的な年寄りゆえに朝は早い。とはいっても冬の朝、気合を入れなければ目が覚めるわけがないのだ。苦もなく起床できたのは久々のロングアプローチに気持ちが昂ぶっていたのだろう。家を出たのは６時前。日の出までに１時間ほどある。まだまだ外は暗い。ランドナーにまたがると、寒さに凍えながら荒川を渡って大宮方面からのアプローチを選ぶ。腹ごしらえに国道沿いの牛丼屋で納豆朝食だ。
早朝とはいえ車の多い道を東松山、熊谷と進む。熊谷を北へ向かって走ればそろそろ群馬県との県境、利根川である。渡ったところが太田市。ここで時間をみて、間に合わないようだと東武線という奥の手があった。時計は８時を過ぎていたからぎりぎりではある。ただこのまま走っても１時間ちょっとで行ける気がした。ダンプの多い渡良瀬川沿いの国道に桐生競艇の看板が目立つようになると、桐生市街が川向こうに見えてくる。迷いながらもＪＲの駅にたどり着くともう１０時１０分前。主なメンバーはすでに揃って出発するだけとなっていた。
忘年横丁に顔を揃えたのは、元締めのほか、きょういちさん、こじまさん、Hisさん。ほかに米田さんがいるはずだが・・・。今回も自走失敗のようである。私が着くなり、皆、もう出発する構え。１００キロ以上のアプローチをこなした私はハンガーノック気味。あわてて甘いものを補給しに駅の売店に走るのであった。
桐生市内で食料を調達し山へ向かう５人。Hisさんがいるので、ペースは早い。加えて、このあたりの地理には疎い私なのである。どこをどう走ったのやら断片的な記憶が混ざり合って、このレポートを書いている２００１年時点では松田ダムにたどり着くまでのコースを思い出せないありさま。白葉峠というところはどんなロケーションだったかなあ・・・。筑波の山々の記憶とごちゃ混ぜだ。
松田ダムは最近できた小さなダム。私のツーリングマップにはまるで載っていないピカピカのダムである。きれいなトイレのあるダムサイトが昼食場所。元締めは、ネイチャーストーブなるものを取り出して干物を焼こうとの趣向である。ただ、燃料となる松ぼっくりの入手に手間取って、なかなか焼きあがるほどの火があがらない。酒の肴には最高なのだが、待っているうちにみるみるビールやら焼酎やらが胃袋に消えていったのは自然の流れである。どうにか焼けた干物が回ってきた頃はすっかり出来上がっていた私であった。
老越路（おいごえじ）峠はそこから３０分ほどであったか。ほげほげのあとの登りとはいえ、大した距離ではなかったのが救いである。静かな峠道を楽しんだ後は一気に下って、佐野の健康ランドへ向かう。「やすらぎの湯」を探すのに迷ってしまったが、ここでちょっとした反省会。何時間も先回りして待っていた米田さんとも合流して軽くビールを呑みだして、さあこれから反省会が盛り上がると思いきや、Hisさん、そろそろ帰ろうと急かされる。さあ今からというときに出鼻をくじかれ、一瞬不機嫌になるおっちゃんだが、ま、団体行動ゆえ仕方がないところである。東武鉄道まで走って引き上げたのであるが、暗くなっていたのでなかなか駅が見つからなかった記憶がある。あれは、どこの駅だったのだろう・・・。
記憶といえば、山道でのゴミの多さに驚かされたことを思い出す。これは強烈だった。ゴミの不法投棄が多い関東だが、こんなひどいのは初めてだった。駐車できるところは例外なく冷蔵庫やテレビ、自転車の残骸や廃材だらけ。まだまだいい自然が残っているのに無念な気持ちが残ったものだ。もうひとつ印象に残っているのは佐野に下りてきてからのダンプの多さ。土曜日ということもあって平日と同じだけの交通量なのだろう、工事中の道ではさんざん追いかけられ、肝を冷やす場面を体験した。過積載の取り締まりが厳しくなり、回数を稼がなければならないから、というきょういちさんの解説が的を得ているのであろうが、土木業界の生き残りをかけた過当競争がこんなところで現れているというのは、どうにもやるせない。
その殺気だった気分を和らげてくれたのは、裏道の清流と子供たちが遊んでいた公園だった。ダンプさえ通らなければ静かな田園都市に戻るのは簡単なはずなのに・・・。ゴミといいダンプといい、都会での快適な生活を支えている大量消費、物質文明のツケが、群馬や栃木という東京周辺に及んでいる事実。忘年会は楽しくはあったが、しばらくこの辺りを走る気にはなれんなあ、と思った９７年の師走であった。
