空巣が来た！炭丸危機一髪
生まれて初めて空巣に入られた。いま、警察が帰ったところ。
盗られたのは炭丸くん。言うまでもなく私の唯一のロードレーサーである。炭丸の由来はヌードカーボンフレームだからである。一応これでもイタ車なのだ。
気づいたのは夜１２時過ぎ。夜食の鍋焼うどんでも作って食べようと思ったときだ。いつも台所の片隅に置いてある自転車のうち、どう見ても１台が消えているのである。が〜ん。いつも仲良く寄り添っているのに、いまはＢＲＯＷＮＹが１台寂しく残っているだけ。
はじめは大学生の息子が金に困って叩き売ったのでないかと真剣に疑った。まさかと思ったが聞いて見る。唯一の同居人に心当たりがないとすれば、こりゃ盗られたとしか考えられない。まず１１０番。そしてベランダ向きの障子を開けたときに目に入ったガラスに空いた大きな穴。これは典型的な空巣の仕業じゃないか。
畳の上にはよく見ると土足の跡。他に盗られている物がないか探したが、目ぼしいものは炭丸くん以外にない。もっとも現金や金目のものは一切部屋には置いていないから盗るものはあまりないのである。冷蔵庫の中にあったハムとりんごが消えていたのは空きっ腹の空巣に相違なかろう。
さて、駆けつけたのは巡査二人。一人に、いかに盗られた自転車が普通の自転車と違って高価なものなのかをとくとくと説明し、ようやく調書を書く価値があるものだと納得させたと思ったら、部屋の外を見にいったもうひとりの警察官が、盗られ炭丸くんによく似た自転車が外に置いてあると言うではないか。
外に出て行くと、まぎれもなくそれは炭丸くん。急に寒くなった夜空のもとでそれはもう冷たくなっておった。察するところ、ビンディングペダルが踏めずに置いていったのかもしれん。
で、自転車が返ってくれば、被害届けを出すようなものはない。ガラス代は必要だけど、めんどうな手続きなどどうでもよくなって、割れた穴から吹込む木枯しをきょう一晩はがまんしながら、炭丸くんが無事返ってきたことに祝杯をあげることに決めた私であった。
ほんなこつ、よかった〜。
後日談：このあと、東京にいる間にもう１度、ひょっとすると２度、空き巣に狙われたことがある。ベランダが中庭に面した１階の部屋は入りやすいのだろう。そいつを確かに見た瞬間は、暑い夏の明け方だった。小さな物音に気づき、布団から起きて網戸を通してそっとベランダを見ると、そこに若い男が中を覗っていた。だれだ、と声を掛けるまでもなく男はベランダの手すりを乗り越えて脱兎のごとく逃げていった。
そういうことがあって、実はその数ヶ月前、おかしなことがあったことと結びついた。さ〜けりすとのオフがあって、八王子が集合場所だった。私は自走だったので駅に着いて気づいたのだが、食料の補給をしようとしたら財布の中に１枚の札もなかったのだ。 その時は前夜の地下鉄での帰りに中身だけ掏られたのだろう、としか考えなかったのだけれど、この事件があったあとは、たぶんその男が部屋に入って財布から札だけを抜き取ったことがあったのだろう、それで味を占めて２度目を狙ったんじゃないか、と今ではそう信じている。 東京は本当に物騒な街である。
